遠き山に日は落ちて 第8話 盲目のガイド

盲目のガイド

オランダの田舎町、ヘイノで行われる展覧会の合間をぬってアムステルダムから汽車に乗り、途中オズナブルッグで乗り換えて、ハンブルグ中央駅に着いたのは、もう4時を過ぎていました。

2004年の6月のことです。

翌朝、友人の勧めでハンブルグ市内にあるダイヤログ・イン・ザ・ダークネス(暗闇の中の対話)を訪れました。ここは、盲目を体験出来る民間の施設です。

建物のロビーに入ると、学生がたくさんいました。学校からバスで来ているようです。

一般の人は、ロビーで待たされました。5、6人集まるとガイドが1人つき、ツアーが始まります。

ここでは立場が逆転します。盲目のガイドに付き添われて、健常者がツアーを行ないます。

まずは、最初の小部屋で注意事項を聞きます。中にレストランが有るので、飲み物を買えるお金を用意しておいて下さい、との説明を受けました。

施設の入り口では、光の出る物全てを外して箱の中に入れます。腕時計も外します。パニックをおこしたら、すぐに非常用の出口へ連れ出してもらえるとの事でした。

一列に連なって細い通路を進むと、目が暗闇に慣れて行くように作られています。

所々で立ち止って、ガイドの説明を聞きながら進んで行きます。ガイドは音により、連れている人達をたえず把握しているようです。

本当の真っ暗闇です。

手すりにそって進んで下さいとか、いろいろ指示をしてくれますが、手摺が無くなると不安でいっぱいになります。何かに触れていないと中空を漂っているみたいです。

この施設は、暗闇の中に町を再現しています。小刻みに歩いて行くと、川があり、橋を渡るとボートが浮かべてあって、試したい人は乗ってみることができます。これは、足下が揺れるので大変難しいです。

さらに進んで街に出て、交差点、車、信号機などを体験して横断歩道を渡ります。マーケットでは、果物屋さんの果物や野菜などを手に取ってみます。

最後にレストランへ行くとカウンターバーの中から注文を聞かれます。注文を終え、手探りでお金を渡すと、おつりを手に握らせてくれます。注文したジュースは、どこへ置いたか分かるようにコップで音をたててくれます。

皆が飲み物を手にすると、ガイドが椅子の有る場所へ案内してくれ、輪になってソファーに腰掛けますが、これがまた大変です。

飲み物を飲み始めて落ちついた頃に、ガイドが自分自身の事を語り始めました。とても印象的な話だったのですが、思い出せないのが残念です。

盲目のガイドは、プロのガイドとして給料をもらって働いています。施設では、英語の他、数か国語に対応できるようにガイドを準備しています。

入場料はけっこう高かったように記憶していますが、僕は、すばらしいシステムに感激しました。

日本でも是非やってみたいと思い、泉南のアトリエを使って出来ないかと考えました。

調べてみると、すでに何カ国かに出来ているらしいのですが、このシステムの権利にお金を払う必要があるとの事で、進まないままでいます。


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